狩人たちの集い場




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[460] 【和訳】Singin' In The Rain | Umbrella / glee【口調変換】

投稿者: もふぇ 投稿日:2019年 6月24日(月)23時49分55秒 p183193-ipngn200404otsu.shiga.ocn.ne.jp  通報   返信・引用   編集済

*もかちゃん宅のチャップマンくんお借りしました!
ちゃぷれむ(チャップマン × ゼフレム)のイメソン、
Singin' In The Rain | Umbrella / glee
https://youtu.be/wnDrfyol29Q
を和訳、ちゃぷれむ風に口調変換しただけの歌詞です(笑)
視点コロコロ変わって読みにくいですが、
是非本家様を聴きながら目で歌詞を追い掛けて頂けると幸いです!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


(Uh-huh, uh-huh) Chill, Holly
《寒いな、ホリー》

(Uh-huh, uh-huh) Good girl gone bad
《あんなにいい娘が塞ぎ込んでる》

(Uh-huh, uh-huh) Take three... action!
《準備はいいか…… 始めよう》

(Uh-huh, uh-huh) Woah!
《さあ!》




【Mathieu(マシュー)】:

You have my heart
《君が頭から離れない》

And we'll never be worlds apart
《住む世界が違うなんてない筈》

Maybe in magazines
《雑誌の表紙を飾ろうと》

But you'll still be my star
《君は私のスターだ》

Baby, 'cause in the dark
《ベイビー、だって闇の中は》

You can't see shiny cars
《磨かれた車も光らない》

That's when you need me there
《そんな時は私が必要だろ》

With you, I'll always share
《いつだって、私の隣は空いてるから》

'Cause I
《だって……》




【Zefram】:

I'm singin' in the rain (We'll shine together)
《俺はこの雨の中(二人で輝きたい)》

Just singin' in the rain (We'll be forever)
《傘も差さずに歌うんだ(ずっと一緒に居よう)》

What a glorious feelin' (Be a friend)
《なんて素晴らしい気分なんだろう(友達で構わない)》

I'm happy again (Stick it out 'til the end)
《ああ、今日も幸せだ(最後まで傍を離れないで)》

I'm laughing at clouds (More than ever)
《雨雲なんて笑い飛ばそう(もっと、いつも)》

So dark up above (We'll share each other)
《空がこんなに暗くても(俺の隣は君が居られるように)》

I'm singin', singin' in the rain (Umbrella)
《俺は歌う、雨に打たれて(ひとつの傘を分け合うように)》




【Mathieu】:

You can stand under my umbrella (Ella, ella, eh eh eh)
《私の傘に入れてあげよう》

Under my umbrella (Ella, ella, eh eh eh eh eh eh)
《そんなところで濡れたままでいないで》




【Mathieu】:

These fancy things
《飾り立てたものなんて》

Will never come in between
《私たちの間には存在しない》

You're part of my entity
《君は私の中の大切な一部》

Here for infinity
《限りない大きさのね》

When the world has took its part
《運命が何か仕掛けてきた時》

When the world has dealt its cards
《世界がカードを切った時》

If the hand is hard
《君の出目が良くないなら》

Together, we'll mend your heart
《一緒に居て、君の支えになるよ》

'Cause I
《そう、だって……》




【Zefram】:

I'm singin' in the rain (We'll shine together)
《雨に歌えば(一緒に居よう)》

Just singin' in the rain (We'll be forever)
《ただ歌うだけで(この先ずっと)》

What a glorious feelin' (Be a friend)
《いい日じゃないか(恋人じゃなくたって)》

I'm happy again (Stick it out 'til the end)
《俺は充分幸せだ(ずっと寄り添って)》

I'm lughing at clouds (More than ever)
《雨雲なんて気にしない(今までよりもっと)》

So dark up above (We'll share each other)
《空が暗くても構わない(俺の隣は君がいいな)》

I'm singin', singin' in the rain (Umbrella)
《ただ歌いたいんだ。この雨の中(一つの傘を分け合うように)》




【Mathieu】【Zefram】:

You can stand under my umbrella (Umbrella)
《私の傍に居てもいいんだよ(傘なんて)》

Ella, ella, eh eh eh (Just singin' in the rain)
《雨は冷たいだろう(そんなことない、歌ってられる)》

Under my umbrella (What a glorious feelin')
《一緒の傘で雨を凌ぐんだ(俺はとてもいい気分なんだ)》

Ella, ella, eh eh eh (I'm happy again)
《雨に慣れてしまわないで(いいよ、充分幸せだから)》

Under my umbrella (I'm laughing at clouds)
《私の隣なら濡れないで済む(俺を濡らす雲なんてどうでもいい)》

Ella, ella, eh eh eh (So dark up above)
《強がるな(暗くても大丈夫)》

Under my umbrella (I'm singin')
《雨が止むその時まで(この雨の中でさえ)》

Ella, ella, eh eh eh eh eh eh (Singin' in the rain...)




【Mathieu】:

It's rainin', rainin'
《雨は降り続ける》

Ooh, baby it's rainin', rainin'
《ああ、まだまだ降り続ける》

Baby, come here to me
《こっちに来て》

Come here to me
《私の隣に》

It's rainin', rainin'
《今日は雨、ずっと雨》

Ooh, baby it's rainin', rainin' (More than ever)
《ほら、止みそうにない》

Baby, come here to me
《だからそんな所に居ないで》

Come here to me
《私の傍に来てくれ》




【Mathieu】【Zefram】:

It's rainin', rainin' (I'm singin' in the rain)
《なあ、土砂降りだ(いいね、最高だ)》

Ooh, baby it's rainin', rainin' (Just singin' in the rain)
《分かってるか?ずぶ濡れじゃないか(もっと声を上げて歌おうか)》

Baby, come here to me (What a glorious feelin')
《早くこっちにおいで(こんな気持ちになるなんて)》

Come here to me (I'm happy again)
《濡れたままじゃいけないよ(俺は幸せ者だ)》

It's rainin', rainin' (I'm laughing at cluods)
《こんな雨なのに(こんな雨だけど)》

Ooh, baby it's rainin', rainin' (So dark up above)
《こんな暗い日なのに(こんな暗い日だけど)》

Baby, come here to me (The sun's in my heart)
《ねえ、私の隣は空いているんだ(俺の心には太陽がいるから)》

And I'm ready for love
《君が好きなんだ(君が好きなんだ)》




My umbrella
《この傘の下》

My umbrella
《ひとつの傘の下》

My umbrella
《雨の中でも》

My umbrella
《寄り添いあって》






[459] 【イメ画】ライナス・ジェンキンス

投稿者: もふぇ 投稿日:2019年 6月24日(月)17時37分33秒 p183193-ipngn200404otsu.shiga.ocn.ne.jp  通報   返信・引用

また全体的に黒い子ができたよ やったぜ



[458] (無題)

投稿者: 工場 投稿日:2019年 6月15日(土)20時41分36秒 42-144-110-82.rev.home.ne.jp  通報   返信・引用

ハザード・ オブ・ヴェンジェンスマシン



[457] 【R-18】『サンクタム・サンクトラム』

投稿者: もふぇ 投稿日:2019年 6月13日(木)16時29分22秒 p183193-ipngn200404otsu.shiga.ocn.ne.jp  通報   返信・引用   編集済

※ゼフレムの過去SSです

「ウィナーウィナー、チキンディナー!」

 本来の扱いをされず泣いている玉突き台の上には空の酒瓶と灰皿が鎮座していた。散々アルコールの染み込んだそれは、絞ったらまだまだ商品になりそうなほど鵐としている。事もあろうにその上に並んでいるのはトランプカードで、風の星座が真中の悪女を取り囲むようにして?A - K - Q - j - 10 の順で五枚の前に並んでいた。充分酔いも回っていたためか、さも嬉しそうに満面の笑みを浮かべると90年代の日本で流行っていたような、肩にかかるかかからないかぐらいの微妙な長髪を靡かせた男は不服そうな顔で紙幣を突き出した。

 「あークソ、またお前か、イカサマやってんじゃねぇだろうな?」
 「何言ってんだ兄弟、今度コイツで美味い飯奢ってやるよ」
 「俺の金だろソレ」

 近所迷惑なんのそので放置していた中古のジュークボックスの騒音を掻き消すほど恐ろしい、嗄れた蝶番の声、鍵と鍵が擦れ合う冷たい音に耳を疑う。悪寒にも似た寒気に背筋が凍り、その音の方へ振り向く事もできない。

 「よォ、今夜も宜しく頼むぜ」

  彼が此処へ来た理由は言うまでもなかったというのに、言うに事欠いてご丁寧に彼の口からその理由を説明してくれた為に平然を装い易かった。
 空間を引裂くそれは、西洋酒を一杯引っ掛けてきた浅ましい口元をしていた。微醺を帯びた頬を隠す様に視線を逸らし、灰皿に煙草を押しつける。

 「取り込み中。一時間後にまたここに──────────」
 「五月蝿ぇ、俺にそんな口聞いて良いと思ってんのか。このホモ野郎」

 厳粛な面持ち。強靭な身体。この、サシで相手したら一発であの世行きとなるであろう相手に、俺はどうしたって抱かれてしまうのだろう。残酷にも突如、振りかかろうとした鉄槌が後に痣となって残ってしまえば俺の商売道具《色気》は微塵もなくなってしまう。そんな事はさせない、なんて弱気に立ち上がった痩身で頼りないヒーローはらしくない、媚び諂うような、扇情的な笑みを零した。

 「つべこべ言わずに俺のをしゃぶりやがれ」
 「…『待て』もできないんじゃ犬以下なんだけど」

 男は俺を自らの膝の上に向かい合わせで座らせると、徐に臀部を撫で回した。彼のしようとしていることが分かり、周囲は「あぁまたか」といった様子で荷物を片付け始めた。
 震える双眼は、もう何度目かの運命を受け入れる。

 「んっ、……アンタ、俺のカード、……そこ、端に置いてる、見といてくれ」

 まだ余裕もあってか仲間の方へ振り返り自分の手札に指をさしていたが、余所見するなと言わんばかりに濡れた指で淵を撫で回され、這い上がってくる悪寒にも似た感覚に身動きすると強引にもその指を突然中に突き入れられた。

 「………っ、…!」

 つい声が出たものの、然程痛みは感じない。昨晩だって、散々いい様にされたおかげだろう。男は暫く黙ったまま太く長い指で俺の中を搔きまわしながらその反応を楽しんだ。





 ***





 「俺、昨晩は何もやってませんよ?ダチと酒飲んでポーカーして、そんだけ」
 「話によれば麻薬が絡んでたとか、そう聞いた」

 何でもお見通しだ、みたいな顔しやがって。そういう顔されんのが一番ムカつく。もしお前が俺のお客だったら身包み全部剥いで追い返してやる。

 なんて言えたらどれほど良いか。

 「薬なんて、絶対……信じて下さい」

 俺だって誰彼構わず媚売ってんじゃない。何が言いたいかって言うと、コイツは論外ってこと。今は必死に無罪を主張する哀れな白人を演じていればいい。慈悲は背徳、転じて道徳、どちらも引き出せるから最強の凶器だ。

 「窃盗、詐欺、汚職。ああ、その類いは全てやったさ、 でも薬なんて」

 こういう時だけ両手合わせてちゃ流石に神も天使も飽きれるな。俺の胸の十字架が実は天界に繋がる通信機器で、俺の行動を常に神様が盗み聞きしてたっていうんなら、そりゃあ今回の件は見逃してくれないわけだな。

 「使用していなくても所持・譲渡だけで一年以上十年以下の懲役、又は情状により300万円以下の罰金を併科させられるんだぞ。心当たりはあるんじゃないか?」
 「……なら証拠は」
 「お前の部屋に小包があった。未開封の物を開けてみたら中から面白い物が出て来たぞ」

 俺は机から身を乗り出し、鼻と鼻とが触れ合いそうな距離まで接近したと思いきや額と額とを合わせて囁いた。

 「それだけじゃ証拠なんて言えないだろ」
 「何?」
 「もし俺がダチに『この紅茶をパデブシア星にいる弟に届けて欲しい』と言われて、俺がそれを紅茶だと信じてパデブシアに持ち帰り、ダチの弟に渡したなら。そうだ、領事裁判権が認められ従順で賢い母星なら俺を裁きはしないだろうな」
 「ああ、全く」

 椅子に掛けていた上着を羽織り、机の上に置かれたバックパックを背負ってさっさとその場を後にしようとしたが、ドアノブに手を掛けた辺りであの不細工な男に振り返った。

 「ママには黙っとけ」

 男に念を入れるというよりは皮肉ったというか、そう言って人差し指を突き立てると、運動部所属、成績不振、同志は皆、前科アリであるような──────くだらない海外ドラマに出てくるような。素行の悪いティーンエイジャーみたいな睨みを利かせると、怒りに任せて勢い良くドアを閉めた。

 外に出て、行きつけのダイナーで軽く飯でも食おうか考えていた所に昨日ポーカーをしたダチが電柱の傍で突っ立ってるのを見て、はて偶然なんて信じていいものかと思った。アイツはドラッグディーラーじゃない。数年前にクラブで知り合った奴だ。女みたいにカウンターで一人ちまちまカクテル飲んでやがった所にちょうど元カノに振られたばっかの俺が来て、話が合うからってその夜はずっとアイツと居た。朝まで。俺の部屋で。ベッドの中で次はどんな恋人が欲しいか、なんて言い合った。いっそのこと、可哀想な奴同士、二人で付き合おうか、なんて言ってやったりもしたけど、それは無理だって断られて。何でか聞いたらさ、お前は滅茶苦茶な奴だからお前と一緒に居ると俺まで滅茶苦茶になっちまう、だってさ。本当に意味わかんね。

 アイツ、女でも探してるんだろうか、なんて。ちょっと揶揄ってやろうと思い立った時には咋な声調で彼に声を掛けていた。

 「よお!二時間ぶりのシャバの空気は美味いなぁ!」

 案の定、奴のサングラス越しに驚きで丸くなった双眼が見えて俺はとても楽しくなった。こんな時間に女探しか、って言ってやると人目も割り振らずに腹抱えて大声で笑ってやった。するとダチは俺の胸倉を掴み、俺の頬の両端を強く摘んで怒鳴り始めた。何言ったか覚えてないけど、物凄く汚くて過激だったことだけは覚えてる。俺はそのダチの罵詈雑言を全て聴き終わったあとでやっと、ダチの様子がいつもと違うことに気付いた。

 「お前いつまでこんな事やってんだよ」

 なんだ、俺が出てくるの見張ってたってワケね。俺はお節介なダチを突き放すと上着のゴミを振り払った。

 「まあ何とかなるだろ」
 「何ともならない」
 「俺やっぱアンタのこと嫌い」

 あの夜から。

 ニタリと口角を釣り上げ、一本だけ烟草を蒸かしながら街の中へと溶けて行った。





 ***





 愛しの恋人が来るっていう約束で、無理に掃除した部屋。ちょっと前までは蜘蛛の巣だらけで風穴だらけの廃墟だったのに、今ではしっかりと俺の手が行き届いている。
 もう本当に一部屋を空けるだけでも充分に苦労したね。埃被った床と本棚、窓の桟、壁の修復とか。一つ一つ、この日を迎える為に色々と工具を買い揃えては、彼の顔を思い浮かべた。そんな楽しい日も終わり。今日から更に楽しい事が僕の部屋に舞い込んで来るんだ。

 そう思ってた。

 このクソ野郎。ここの鍵持ってるからって。お前が嬉しい時だからって。
 勝手に俺の部屋に入ってくんのは不合理だ。仮にもここは俺の部屋だぞ。

 「んっ、ァ、……ア゛ッ、……い゛、……痛い、痛……ッア゛ァ……!」
 「文句言うな、お前は俺にいくつ貸しがあると思ってんだ」

  顔を床に押し付けられ、鷲掴まれた腰は強制的に高くあげられる。そして馴らすこともされず固く強ばったままの後孔に凶悪なもの強引に押し込まれた。予想していた激痛と衝撃だったが、反射的に口から苦悶の声が漏れる。それが自身の体を好き勝手に蹂躙する男の欲に火をつけ、中を穿つ凶器を漲らせることになってしまう。はは、こんな奴が元教師だとか最高に笑える話だな。

 「そんなに痛ぇなら、楽にしてやるよ」

 ふいに首筋に皮下注射器《ハイポスプレー》を撃たれ、いつも以上に過敏になってしまった身体に困惑していると、痺れが頭にまで達したのか、酩酊した時のように頭がぼうっと霞みがかって思考がままならないのに目の前の彼と彼の与えてくる快感だけははっきりと見えていて、はっきり見えているそれらがもっと欲しくてたまらなくなってくる。

 「ん゛、ぅ……」

 罪科に何度も振り下ろされる鉄槌。無残にも律動を繰り返す熱を帯びた楔を飲み込みながら、僅かに残った理性が半狂乱で金切り声を上げた。

 「どうだ?気持ち良くなっただろ」
 「っひぎ、ぃ゛、ぁ…………ん゛ぃ、き゛、気持ち゛い、ぃっ… ………」

 ──────────ああ、しまった。
 神に誓って薬はやらないって決めたのに。
 恋人とのセックスなのにその場で吐きたくてたまらなくなって、必死になって口元を押さえて吐瀉物が逆流しないように堪えていたら「声を出せ」だなんて言い出して今度は手をベッドに縫いつけるように押さえてきて今すぐにでも叫び散らしてやりたかった。

 「あ゛ッ、……ああ、~~~~ッッ!!!」

 俺の後を追うように、彼が精を吐き出したのを感じて、今日一番の吐き気に襲われた。後ろから彼が抜け、どろりとしたものが足を伝う。
 耐えきれず嘔吐くと、察した彼に首根っこを掴まれてベッドの外へ顔を向けさせられる。その振動も相まって、いよいよ俺は胃の中のものを床に向かって吐き出した。

 「ガキができたら堕ろせよ」

 ──────────あーあ、また掃除しないと。





 ***





 「何やってんだ」

 あろう事か室内で葉巻を蒸す非常識極まりない友人を横目に、サイドボードからありったけの衣服と現金と烟草を引き摺り出した。直に警察は元彼、俺の自宅の周辺を洗い始めるだろう。だからこそ手掛かりは塵一つ残せなかった。

 「残念だけど、もう此処には居られない」
 「ほ~らな、やっぱり、痛い目見るぞって言ったろ」

 散々ぐずぐずに泣き腫らした後だったもんで、クソみたいなプライドの為だけに自分の情けない顔を見せるわけにはいかず視線はサイドボードを向けたままだった。

 「なあ一体どうしたって言うんだ」

 静かに、深呼吸するように、息を吐く拍子に、

 「殺した」

 と。

 ぽつりと呟いた。

 一階の共同洗濯機が回っている。ガタガタ、ゴトゴト。
 耳の中に纏わりつくようにその音が頭に引っ付いて離れない。

 「…ね、そういえば、アンタとも一度だけ寝たことあったっけ」

 突然の(しかも、想定外の)話題に彼の双眼はまた面白いくらいに丸くなってるだろう。しかし、問題発言の主は彼の動揺など素知らぬ風に、涼しい顔をしていた。

 「ありゃ、ヤッたなんて言えない」
 「誰もヤッたなんて言ってないだろ」

 本人の前で言ったらブチのめされるか、殺られるか。コイツとの夜は本当に笑えた。いい歳して女すら抱いた事無いって言うもんだから。可哀想に、俺が“初めて”の相手してやった。可哀想に、と言えど別に何も可哀想じゃねえけど。全部、アタマからシッポまで。学校じゃ絶対に教えてもらえない“快感”ってやつをそこの葉巻を口から離しながら咳払いしてる間抜けに教えてやった。

 「……あの事はもう忘れたいんだ」

 そうだ。
 あの一夜はただのお遊び。一瞬の気の迷いというか。魔が差したというか。
 互いの間には一切の感情もなかった。

 ……

 「そうだっけ」

 自分に対する懐疑の念と妙な気持ちで胸が綯い交ぜになって、珍しく頭がぐちゃぐちゃになる。思考が寸々に裂かれ、また紡ぎ直しては、寸々に裂かれてしまう。

 「…そうだよな」

 なんだよ。

 胸糞悪い。

 本当は忘れてないくせに。

 忘れられないくせに。

 あの夜、同じ気持ちじゃなかったのかよ。

 肌理きめ細かな胸元に染みた紅や紫の花弁や、肩や鎖骨の噛み痕が、肌を重ねた回数を痛々しく物語っている。

 乱雑にシャツを振り払うと、彼から葉巻を取り上げ、それでいて彼を床に強く押し倒していた。

 ああ、なんて御都合主義。

 恋人を殺した後はセックスか。

 さて、どうか、お願いします。

 神様、どうか今だけは、耳を塞いでいて。

 「……今度は、絶対に忘れないようにしてやる」

 陽が翳り仄暗い部屋を、天井の陰鬱な照明が照らしていた。

 擡もたげる愛おしさのままに、彼の唇を、肉体を貪る。

 法悦が訪う予感に追い立てられるように最奥を突き上げられると、嬌声が悲鳴に変わった。

 今時、ポルノでもメロドラマでも聞かない言葉を何度も囁かれた。

 でも、それがずっと心地よかった。

 だって、この最後まで彼の言葉をずっと待っていたのだから。

 本当は自分の恋人としてその言葉を囁いて欲しかったけれど、これ以上贅沢したらいつか罰が当たるんじゃないかって。

 怖くて、本当に本当に怖くて。

 辛かった。

 「元気で」
 「……元気で」

 売淫だけで生きている俺にとっちゃ小型船なんて夢のまた夢で。旧型のバカンス用の船が芥場に落ちていた時は一発、馬券を当てた気分だった。中指でデッキに円を描くと、タルガトップでいうルーフパネルが作動し、硝子窓に変形した。
 もうこの肥溜めに思い残すことは無い。傍で見ていた時よりもずっと埃を被った地上を見降ろすと、指針をワープ3に合わせて機体を発進させた。ワープ3というと、ちょうど光速の27倍ぐらいのワープ速度であり、俺が呑気に瞬きしている間に故郷はあんなに小さくなってしまう。あの肥溜めの埃っぽさはもう微々とも感じない。ああ、遂に。あの星ともおさらばか。なんてちょっとおセンチ気取れば、柄じゃないな、と眉を顰めた。
 別に感傷に浸っている理由ではない。そんなわけない、と少し笑い声を漏らしてレバーを押し倒し徒広い宇宙を突き進んだ。遠く、見えなくなった第二の故郷へ振り返り、一人静かに中指を立てる。


 これ、本人に言ってなかったけど、


 アイツ、あの時と全然変わってなかった。





 -fin-


 『サンクタムサンクトラム』
 ・・・契約の箱舟が維持されたソロモンの寺院にあるユダヤ神殿の一番奥の部屋から成る聖域。



[456] 『ネイキッド=レイヴン』

投稿者: もふぇ 投稿日:2019年 3月15日(金)00時16分49秒 p348034-ipngn200402otsu.shiga.ocn.ne.jp  通報   返信・引用   編集済

*自己満


 全宇宙人類と神々双方の秩序を統べる王は、ある時最も美しい鳥を王様に決めることにしたという。

 鴉は自分の姿を酷く醜んでいた。どうにか形を美しく装うため、野や森を飛び回り、他の鳥たちが落とした羽を拾い集め、それを身体中に貼りつけた。

 そして約束の日、虚飾で彩られた鴉は全知全能の神の前に現れ──────────





 ***





 次に目を醒ました場所は母親の腕の中なんかではなく、孵卵器《インキュベーター・ユニット》や冷却装置の稼働する小さな重低音が響く広い部屋の、ある種の静謐な空間であった。空間を裂くような音といえば時折、船の傍を流れる惑星を捉えたことを報せる信号音ぐらいで、それ以外は何も無かった。

 「調整進捗率、ナンバーエイトが86%。ナンバーナインは73%です」

 傍らの孵卵器を見上げながら、エスコートの保安士官が艦長に経過報告をしている。打ちっぱなしのコンクリート壁に無骨なダクトが這う暗く広い部屋には、巨大な棺めいた十基の孵卵器が物々しく鎮座し、その内の何基かはすでに開放されていた。時空連続体、それからプルーラル・ゾーン────────云わば通常の物理法則が通用しない空間を長い間一区切りずつ飛んでおり、乗組員の顔色も船酔いによる影響でより鬱蒼としている。宇宙空間には無数の星間物質が漂っている。そうした物質を航行時に船体に接触しないようにするため、重力子を発生させ、重力場を形成するデフレクターも故障していたものだから悪夢に魘された乗組員が愚痴を零しあっていた。この船には無限不可能性ドライブ機能でも着いてるのかだとか、なぜ亜空間高速通路を使わなかったのだと文句を垂れ込む乗組員を横目に、保安士官はペンを動かした。

 「フィフティーナインの様子は?」
 「こちらへ」

 保安士官は医務室の前まで艦長を案内すると次の仕事に取り掛かる為にさっさと奥の部屋へと消えて行った。艦長が医務室を見回すと、包帯で全身を拘束され、ベッドの隅で虚ろな目をした私を視界に捉えた。すると、艦長は携帯端末くらいの大きさの甲板を取り出し、私にそれを見せてきた。
 仮想空間実体化装置《ホロデッキ》に映像が映し出されると共に、ディスラプターの奏でる砲声が聞こえる。映像に映し出されたのは一心不乱に敵機へ位相エネルギーを撃ち込むことだけにしか能の無い間抜けな自分の姿であった。
 結果は最悪にして最高。随分と派手に星を荒らしたお蔭で首に賭けられた大金は釣り上がり、宇宙捜査官の増援部隊に追われる羽目となったが任務の遂行としては完璧な結果であった。

 「君は素晴らしいよ、フィフティーナイン。報酬に何か一つ欲しいものをやろう。そうだな、ああ、例えばパデブシア星の多機能携帯電話なんてどうだ?セクター001の物よりずっと賢い、皆使ってるじゃないか」

 「それより、これを通して頂け無いでしょうか計画は優先事項に抵触しないよう、全ての面に配慮して練りました」

 艦長の顔は笑っているが、楽しそうではない。嫌な予感がする。

 「私は今まで貴方達の為に────────」
 「何も無い星から連れ出してやったのは誰だ、フィフティーナイン」

 今まで平然としていた『59#123D』の顔に初めて、小さな亀裂が現れた。微かな痛み、それとも、喪失の色と云うべきか。複雑な心境と言い表すには到底生温く、酷く悶々とした、小さな子供が真っ白な紙に思いつくままに鉛筆やらクレヨンやらで殴り書きをしたような、そんな本能に任せて造られたような瞳を前にして、生命の危機……或いは身近な死、それら余程の事ではないと揺れ動かない厚い感情を持った身体に酷く安堵した。

 「いいか、フィフティーナイン。生まれなんて子宮でも孵卵器でも関係の無い話だ、そうだろう」
 「非論理的なお願いを申し上げるべきときではありませんが、僭越ながら支持して頂けないでしょうか」
 「フィフティーナイン、ああ何故だ、……君の家族は我々だろう、そうだろう」

 地球人は宇宙艦隊を設立し、更に他の異星人と手を結んで惑星連邦を組織して太陽系外の宇宙の探査に力を注いでいた。宇宙の真理とは、究極の疑問の内の一つである。この銀河の果てから果てまでは何億光年分あるのかとか、そもそも宇宙空間に果てというものが存在するのかとか、そんな、折角の休日であるのに書斎で一人一杯分の珈琲を啜って、あと数週間もしたらこんな仕事辞めてやるなんて考えながらも一切手のつけられていない内部統制報告書を尻目に万年筆を回している間、思いついたような愚問を考えたのは地球人だけではなかった。
 地球人は賢くて、醜い存在だった。地球人は我々よりも“感情”というものをいくつも持っている。優性人類の許容範囲は少しばかり窮屈だということに対して私は、曖昧な基準や範囲というものは優劣がつけ難くその分優性人類にとって曖昧で論理的感情は屈辱的と言えた。地球人よりも“関係”に疎い異星人から出る「家族」なんて、どうせただの単語に過ぎない。だから頭で処理しきれない分を同じ人間に問うても返答は無いのだ。不可思議な感情に流れを任せてただ身体を動かしただけに過ぎない。一般のそれよりも小難しい性格だから尚更、その行動と意味を汲み取るには時間が掛かるだろう。故に、それを本人に問うた所でそれは意味を為さないのだ。この次元に私のようなが何人いるかは知らないが、遺伝子操作により改造された喋る肉体についての教科書(そう言っても過言ではなさそうだ)『59#123D』は頭に疑問符を浮かべるどころか顔の筋肉一つ動かさず何もしなかった。





 ***





 「公文書館、領事館の制圧射撃を行う」

 あの企画書なんて通るはずも無く、ついにセクター001に終止符が打たれる日がやって来た。

 「回線通じました。通信可能です」

 通信士官が画面に地球人の船内の映像を映し出す。

 「今すぐに投降せよ。すぐに投降しないのなら、そこに照準をセットしているレーダー探知不能の、長距離放物線光子魚雷を発射する」

 今度は何があったとしても条約は役に立たない。新型光子魚雷が従来のものよりも強力なのは間違いない。言うまでもなし──────広大な恒星間の障壁などに邪魔されない限り─────── 一般的な意味で停止することはない。

 「全兵器、光子魚雷を──────私の命令に合わせて発射しろ」

 周囲の小型船達はフェイザー砲で保安チームの面々を、効果的な一撃で昏倒させていく。誰が行く手を立ち塞がろうが、相手をちらりと見るや、目にも留まらぬ速さで動いたかと思うと、鬼気迫る逃れようのない一撃で眠らせる。

 「兵器装塡、発射!」

 どうしたものか、直ぐに光と炎が小型機のエンジンからあがり、凄まじい爆発を起こしたのは自らの機体であった。
 煙を吐き出しながら、致命的な衝撃を受けた敵機は震え、馬力が落ち、傾き、制御不能になり回転しているが、それでも速度を上げようとしていた。
 もう一人の少尉が、震える声を抑えながら淡々と報告する。

 「内部爆発により、敵戦艦の兵器システムとシールドは完全停止しました」

 操舵士は墜落を食い止めるのに必要な時間が殆ど残っていない事を知りながら手当たり次第にデッキのあちらこちらを叩いていた。

 「いくら着飾ってもどうせは地球の子だな……そんなに地球を救いたいか」
 「待て、違う、これは」

 荒唐無稽の絵空事、或いは仏語でも喋られているみたいにその意味が理解できなかったが、艦長が自身に失望の念と怒り、それから誤解を抱いていることは大いに理解出来た。

 「残念だ、我が子よ」

 その譬え話の意味を尋ねようとしたが、おそらく神が配慮してくれたのだろう、凄まじい風圧と宇宙の広さに段々と意識が遠退いていった。





 ***





 ──────────全知全能の王は、彼の羽が最も美しかったので、彼を王にしようとした。

 すると他の鳥たちは、憤然と異議を申し立て、それぞれ見覚えのある自分の羽を鴉から引き抜いた。結局、彼に残されたのは、自分自身の黒い羽だけだった。

 寒い。

 暗い。

 おやすみ。


 ──────────《私のトム・ボーイ》…


 世界は一つの器に乗せられ、銀河時計は終局へ時を刻む。どのような原理で現在に至ったのかは誰も見当はつかないが、器の一定角度を保ったまま滑らずに転がる定常運動を続け、現代の項目を切り抜いた次元が漏斗状の器の底に辿り着くまでの間、懐かしくそれでいて柔らかな母の声で目が醒めたと思いきや、アラビア起源説の歴史を知らない珈琲と同様、自分の人生に対し実に無知であるような間抜けな面々に視線を注がれていた。

 「酷い放射線障害と打撲を受けてた、…放置しておくと内臓に悪影響を及ぼす」

 あれは確か、二つ、否、三つ目の惑星を襲撃した後に議場で呑んだワインの色に似ている。ワインレッドの髪をした女、……女(明確な性別を識別されない)が薄ら視界に映る。人種は、そうだ、銀河時計を願い井戸にしているような──────────極めて下品な人種、アメリカ人。

 「一体何処から来たんだ?こんな状態でも生きていられる人間なんて、初めて見た」
 「俺ちょっと服脱いで来るわ」
 「え、待って、なんで??」
 「見て分かんねぇか。レオンがこのボンボン宇宙人の隣で素っ裸で寝っ転がりゃちょっと脅すだけで小遣い貰えるってわけよ」

 今度は金髪の三人組が映る。一人は黒尽くめ、もう一人は高校生くらいの青年、残りの一人は西部劇に出てくる用心棒のような格好をしていた。

 「オジサンってそうゆう事しか考えないよね、サイテー」
 「そこは賢いだろボウズ」

 つまり、胎児が母体から生まれ出る時というのは、丁度今のような心持ちだろうか。私は眩しさに目を細めながらそう思う。

 「……ここは何処だ?」





 「……Welcome to the Los Angeles.(ようこそ、天使亡き場所へ)」





 -fin-




[455] ゆきのいめそんそそん

投稿者: 合金 投稿日:2019年 3月 7日(木)23時13分36秒 cagk2005-129.kcn.ne.jp  通報   返信・引用

※瑞鳥真珠のイメソンですうう相変わらず妄想でできております、!
最後の『Gashina』だけは、元が韓国語なので、和訳の歌詞をちょっといじりました!!


『バレリーコ』

“純情少女と勘違いされて 全校男子に狙われた”
“絶頂感 ほら最後まで面倒みてあげる”
“今この瞬間 全て完璧だ”

『乙女解剖』

“君が別の人のことを好きになるって夢を見たんだ
  否定してほしい ねえ愛して?”
“ねえ最近冷たいね”
“恥をしたい 痛いくらいがいいんだって知ったあの夜みたいに”

『ドラマツルギー』

“ドラマチックな展開をどっか期待してんだろう”
“優しさに温度も感じられない
     差し伸べた手に疑いしかない”
“まだ見ぬ糸を引いて 黒幕のお出ましさ”

『Gashina』

“誰もが僕の香りを欲しがるのに
どうして君だけには分からないの?”
“どうしてこんなに綺麗な僕を置いて去っていくの
そんなに簡単に離れていくの?
一緒に行こうって約束してたのに
僕から遠ざかっていくんだね”
“僕がいなくても、上手くやっていけるでしょ
いくら考えてみても、君は馬鹿なんじゃない?”



[454] 【イメソン】Hit The Road Jack

投稿者: もふぇ 投稿日:2019年 2月24日(日)14時48分7秒 p348034-ipngn200402otsu.shiga.ocn.ne.jp  通報   返信・引用

替え歌にするにも修正加える部分が無いほど
ジャック(& ジェニー)してる恐ろしいイメソンをたまたま見つけました……

https://youtu.be/a_cHddNaKQo

夫婦喧嘩は犬も食わない(震え声)

............................................................................................................

Jennie:
Hit the road Jack and don’t you come back
no more, no more, no more, no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで
もう二度と もう二度と もう二度と)

Hit the road Jack and don’t you come back no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで)

Jack:
What you say?
(何だって?)

Jennie:
Hit the road Jack and don’t you come back
no more, no more, no more, no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで
もう二度と もう二度と もう二度と)

Hit the road Jack and don’t you come back no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで)

Jack:
Woah Woman, oh woman, don’t treat me so mean,
Woah Woman, oh woman
(おい、こんなひどい扱いすんなよ)

You’re the meanest old woman that I’ve ever seen.
(お前は俺が知ってる中で一番の最低女だな)

I guess if you said so

(まぁお前がそういうなら)

I’d have to pack my things and go. (That’s right)
(荷物まとめて出て行くよ)(そうよ!)

Jennie:
Hit the road Jack and don’t you come back
no more, no more, no more, no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで
もう二度と もう二度と もう二度と)

Hit the road Jack and don’t you come back no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで)

Jack:
What you say?
(何だって?)

Jennie:
Hit the road Jack and don’t you come back
no more, no more, no more, no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで
もう二度と もう二度と もう二度と)

Hit the road Jack and don’t you come back no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで)

Jack:
Now baby, listen baby, don’t ya treat me this-a way
(いいかベイビー、聞くんだベイビー、こんなひどい扱いするな)

Cause I’ll be back on my feet some day.
(俺はいつか立ち直ってみせるからな)

Jennie:
Don’t care if you do ’cause it’s understood
(どうでもいいわ もう決まったことなの)

you ain’t got no money you just ain’t no good.
(あなたはお金もなけりゃ 取り柄もない)

Jack:
I guess if you said so

(まぁお前がそういうなら)

I’d have to pack my things and go. (That’s right)
(荷物まとめて出て行くよ)(そうよ!)

Jennie:
Hit the road Jack and don’t you come back
no more, no more, no more, no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで
もう二度と もう二度と もう二度と)

Hit the road Jack and don’t you come back no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで)

Jack:
What you say?
(何だって?)

Jennie:
Hit the road Jack and don’t you come back
no more, no more, no more, no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで
もう二度と もう二度と もう二度と)

Hit the road Jack and don’t you come back no more.
(出てって!ジャック もう二度と戻ってこないで)

Jack:
Well
(あのな、いいか)

Jennie:
don’t you come back no more.
(もう二度と戻ってこないで)

Jack:
Uh, what you say?
(はぁ?何だって?)

Jennie:
don’t you come back no more.
(もう二度と戻ってこないで)

Jack:
I didn’t understand you
(お前のこと理解してなかったんだ)

Jennie:
don’t you come back no more.
(もう二度と戻ってこないで)

Jack:
You can’t mean that
(そう言って本気じゃないんだろ?)

Jennie:
don’t you come back no more.
(もう二度と戻ってこないで)

Jack:
Oh, now baby, please Oh,baby,
(なぁ、お願いだからさ)

Jennie:
don’t you come back no more.
(もう二度と戻ってこないで)

Jack:
What you tryin’ to do to me?
(俺をどうしようってんだ?)

Jennie:
don’t you come back no more.
(もう二度と戻ってこないで)

Jack:
Oh, don’t treat me like that
(こんな扱いすんなよ)

Jennie:
don’t you come back no more.
(もう二度と戻ってこないで)




[453] 舞台裏

投稿者: 投稿日:2018年12月23日(日)09時57分42秒 softbank060137202152.bbtec.net  通報   返信・引用

左苛嘉与人が廃街に迷い込む前のお話。





俺は、俺のことを奥深くまで理解してくれる人が欲しかったんだ。





事の始まりは、家庭事情にあった。

信仰心の深い我が両親は、小学校へ入学したばかりの幼い俺を連れて教会へよく出入りしていた。
教会の静けさは苦手だったから、それはもう参ったものだった。
だが、大抵の静かな場所は苦手ではなかった。むしろ、騒げば誰かが俺を叱りに来て、構ってくれたから好きな場所に分類されていたが、教会は別だった。
図書室のようなルールに従った静寂ではない、決定的に違う空気感があったのだ。気持ちの悪い空間だった。
これは後で分かった事だが、その教会には葬儀場と同種類の空気が蔓延していた。それが原因だったのだろう、嫌悪感の。
死のにおいと、この世に居ないものに対する執念による静寂。
そんな悪趣味なものが、狭苦しく詰め込まれた空間。これ以上に気持ちの悪い場所は他に無いだろ。
……それに、ただ単に、父さんや母さんが実の息子である俺よりも、神様なんてものに夢中になっていることが何より嫌だった。

おっと。いけないな。
長語りしてしまうところだったよ。
本題に戻そう。

さっきの長語りで察してくれる人もいただろうが、俺は信仰心が深いわけじゃあない。
俺は幼少期から、空想に人生を賭ける人間では無かった。
神様も天使様も閻魔様も、全て信じちゃいやしなかった。
なんならサンタクロースだって。

我ながら不思議だよ。あんなにも神様にどっぷりな両親を見ても信じようとしなかったのは。
まあ、俺は、小さい頃から周りの奴らとは違う事をやりたがる、ひねくれ者だったのだ。

例えば、そう。この話はよく覚えている。
小学生の頃、周りが鬼ごっこをしようと誘うのを無視してサッカーを始めた事がある。鬼ごっこをしていた奴らは怒ったり困ったりして俺に言葉を投げていた。
それも無視して続けていたら、誰かの顔面にボールをぶつけたんだ。
先生にそれはもう酷く叱られたさ。それからというもの、先生がよく俺に目を向けるようにもなった。

うん。この話はやっぱりよく覚えてるな。

あ、「覚えてる」っていうのは罪悪感からじゃ無くて、こうすれば構ってもらえるという知恵を得た瞬間だからだったからだぞ。念の為。
そうだな、言うなれば、構ってちゃんって奴だろうか。

ああっと、またやってしまった。
いつも"神様"の言葉を代弁している所為で、こうも自由に己の過去を語るとなると、つい、舌が回ってしまって困る。
そうだね、この場では自分を語ることは大目に見て欲しい。
そもそも、これを聞いているやつは居もしない神様くらいだ。



それで、話はいきなり何年も先になるんだが……そうだな、中学生の頃か。
ある日、両親は多くの信者と共に心中してしまった。
しかも、その頃には幹部的存在になっていたらしい両親は、その計画に一枚噛む張本人達だった。
俺は当時、今日はずっと絶対に教会にいろと言う両親を無視して教会から抜け出していた──もちろん、気を引くために。だから、そんな訳の分からないことには巻き込まれなかったが、教会に居た奴らは集団自殺していた。殆ど脅すような形だったらしく、極一部逃げ出した奴らも居たが。
そんな訳の分からない計画でも、今まで気を引こうと努めていた両親が、両親の意思で消え失せたんだからたまったものじゃなかったけどな。
俺の使命は達成されないまま、期限切れにされちまったんだから。

葬儀が終わると、俺は親戚に引き取られた。
そうそう、初めの内に言った、教会は葬儀場と同種類の空気って分かったのがこの時だ。
本当に気持ち悪い。

で、気分が悪くなって引き取られ先では殆ど部屋に引き篭もっていたさ、俺は。
更に布団の中に篭もって考え事をよくしてたものだ。
その議題の内の一つで、俺のレールを思い切り切り替えたものが一つある。
信者は良いものかもしれない。
というものだ。
両親のことはなるべく考えないようにしていたが、それに近い話題を考えていたのは、まあ、仕方がない。流石に整理が付かなかった。
勘違いしないで欲しいが、"良いもの"と言っても、善なるものという意味じゃあない。
自分にとって都合の良い可能性があるということでの"良いもの"だ。

俺は所謂、構ってちゃん。
信者は盲目的に一つのものを見つめる。まさに、自らの命を投げ捨てる程に。


その議論の結論が出たのは、引き篭もりから抜け出して、無事に通信制高校への受験も受かって、落ち着いてきた高校三年の頃だった。

もし、信者の見つめるものが俺になったのだとしたら。
俺にとって、それ以上に心満ちるものは無いんじゃないのか。

これが結論だな。

全部を振り返って客観的に見ると、ありえない結論の付け方だなと思うよ、我ながら。


それから、そうこう経て二十年くらい後。今に至る、だな。
あの集団自殺から逃げ出した奴らも、今じゃすっかり俺の宗教の信者だ。小規模なりに人数も増えてきた。本当に少しだが。
毎朝立派に教祖様の着ぐるみを着て、神様のお言葉って台本を読んで、ちいさな小さな舞台の上で拍手喝采を受けている。
そして、舞台が終わったあとの儀式。
儀式と言っても握手をするだけだ。怪しげなものはやってないさ。
ただ、信者の内心を知るには触れ合うことが一番の近道だからな。
ああ、ちなみにこれは別に道徳的な意味合いなんかじゃあない。本当に俺は、いつからか触れた相手の心情なんかを読み取れるようになっていたんだ。
有難いことだよ。本当に。
すごく。


今は、一日の演目を終えて着ぐるみを脱いで、他でもない左苛嘉与人でいる。俺は俺の言葉で自分を語っているところだ。
……そのはずなんだが。
これが台本の一部なのか、自分の言葉なのかが若干判別できなくなってたな。
少し、腹の辺りがすーすーする。
風穴でも空いたかと思って腹をまさぐってみたが、もちろん穴なんて空いてなかった。
言っておくが、腹が減ったわけでもない。

……まあ、誰かの目を惹けていることは確かなんだ。
幼い頃からの夢を叶える為には、何かを犠牲にすることも必要だってことだろ。
器用でないなら尚更。
むしろ、器用でないのに、何かを捨てただけで夢が叶っているんだ。
恵まれた人生じゃないか、まったく。



[452] 『ボヘミアの醜聞』#10

投稿者: もふぇりんぎ 投稿日:2018年12月19日(水)20時14分22秒 p565075-ipngn200310otsu.shiga.ocn.ne.jp  通報   返信・引用   編集済

────最終話────


『ボヘミアの醜聞』https://6910.teacup.com/snt/bbs/441
『ボヘミアの醜聞』#2  https://6910.teacup.com/snt/bbs/442
『ボヘミアの醜聞』#3 https://6910.teacup.com/snt/bbs/443
『ボヘミアの醜聞』#4 https://6910.teacup.com/snt/bbs/444
『ボヘミアの醜聞』#5 https://6910.teacup.com/snt/bbs/445
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『ボヘミアの醜聞』#7 https://6910.teacup.com/snt/bbs/447
『ボヘミアの醜聞』#8 https://6910.teacup.com/snt/bbs/449
『ボヘミアの醜聞』#9 https://6910.teacup.com/snt/bbs/451



────



 ベイカーストリートには雨が激しく降っていた。Speedy's cafeの外でメイナードが煙草を吸いながら傘を差して立っている。腕の下には透明なプラスチックの書類入れを抱え、足元にはブリーフケースを置いていた。一方、ポーレットは雨に濡れながら背中を丸めて家へと急いでいた。メイナードが立っているのを見ると驚いて立ち止まり、歩み寄った。

 「あれ、煙草なんて、珍しい」
 「カフェに行くこともあまりないね」

 煙草を地面に落とし足で揉み消して傘を閉じ、ブリーフケースを手に取るとSpeedy's cafeに入っていったので、ポーレットもついていった。





 それほど経たず、彼らはひとつのテーブルに向い合って座っていた。ポーレットはマグを手に取り、メイナードが自分の前に置いたプラスチックの書類入れを眺めた。そこには「アクセス制限-機密事項」というステッカーが貼ってあった。そして、あの電話が様々な書類の一番上に入っている。

 「これはアイリーン・アドラーのファイルですか?」
 「永久的に非公開だ。出掛けて行って弟に知らせてやろうとしたところで────もしくは良ければ君が────彼女はどういうわけかアメリカの秘密結社に身を置いた。新しい名前、新しい身分証で。生き残り────成功するだろう────だが、あいつは彼女に二度と会うことはできないだろうな」

 ポーレットはマグのコーヒーを啜りながら、何かを察した様に頭を上げた。メイナードのその彼女の視線に気が付いたのか静かに首を振って頭を抱えて話を続けた。

 「ああ、彼女は死んだよ。二ヶ月前カラチのテロリスト支部に捕らえられ、首を切られた」

 ポーレットは少しの間、沈黙してメイナードを見つめた。そして静かに咳払いした。

 「それは確かに彼女なんですか?……その、信じ切れません。前にもそんなことがあったから」
 「私は徹底した────今回はな。ダニエル・ブラッドフォードは私を馬鹿にするだろうが、あいつをすぐに使えたとは思えん、君はどうかね?」

 二人は少し見つめ合った。メイナードは書類入れをテーブルの上でポーレットの方へ押し出し、肘をテーブルに置き、両手を握りしめ、その上に顎を載せた。

 「それで…恋人に何と言うべきかな?」





 221B。ダニエルはキッチンのテーブルの前に座って顕微鏡を覗き込んでいた。階段を上がってくる足音が聞こえると、ポーレットが視界に入ってくる前に口を開いた。

 「新しい知らせだな」

 ポーレットは書類入れを手に持ち、ドアの入口に立ち止まった。ダニエルは顔を上げなかった。

 「もしリーズの三重殺人についてなら、犯人は庭師で間違いない。誰もイヤリングに注意を向けてなかったからな」
 「ああ。ええ、いや、それは、うん…、そうじゃなくて、アイリーン・アドラーについてだよ」

 ダニエルは顔を上げたが、その表情から心境は読み取れない。

 「ん?何かあったのか?戻ってきたか?」
 「いや、彼女は、あの…下でメイナードと鉢合わせしたんだ。でも電話がかかってきちゃってさ」

 ダニエルは立ち上がってテーブルに沿ってポーレットの方へ歩み寄った。

 「この街に帰ってきてるのか?」
 「いや。彼女は、あの…」

 ポーレットはテーブルを暫く見つめると、鋭く息を吸い込んでダニエルに視線を向けた。彼女は近くへ寄り、顔を顰めていた。

 「ぁ、アメリカにいるの」
 「アメリカ?」
 「ん、うん。秘密結社にいるらしい。どうやって移ったのかはわからない、けど、あの、んん、分かるでしょ?」
 「分かるって?」
 「んん、君は二度と彼女に会えないだろうってこと」
 「なぜ僕が彼女にまた会いたいと?」

 ポーレットが悲しそうに微笑むと、ダニエルは向きを変えてテーブルに戻っていった。

 「君、彼女と居る時、凄く楽しそうに見えた。僕と一緒にいる時の感じとは全くの別物だけど、まるで────新しくできた友達と遊んでいる時みたいに、ダニーは彼女との推理を楽しんでるように見えた」
 「……それは彼女の資料か」
 「ん?あ、ああ。メイナードへ返すつもりだった」

 ポーレットはダニエルに書類入れを差し出す。

 「要る?」
 「いや」

 ダニエルは椅子に座ると、また顕微鏡を覗き込んだ。

 「ふうん……」

 ポーレットは暫く恋人を眺めていた、どういう選択をすれば良いのかよく考えながら。やがて彼女は前に進むことにした。

 「あの。実はね…」
 「ああ、でも電話は持っていよう、やっぱり」

 ダニエルはポーレットの方へ手を伸ばした。だが作業からは目を離さないままだった。

 「もうこの中には何もないよ。全部、取り除かれちゃった」
 「知ってる」

 彼は言葉を続ける前に暫く止まった。

 「持っている」
 「これはお兄さんに返すつもりなんだ。ダニーが保管しておけないよ」

 それでもダニエルは手を伸ばしたまま、顕微鏡を覗き込んでいた。

 「ねえ、ダニー、これはお兄さんに返さなきゃいけない。今は政府のもの。僕があげることはできないよ…」
 「頼む」

 ダニエルは少し先に手を伸ばした。ポーレットは彼を見てどうすべきか暫し悩んだが、結局は書類入れを探って電話を取り出し、彼の手に優しく、そっと置いた。ダニエルはゆっくりとそれを指で包み込んでからズボンのポケットにしまい、顕微鏡の前に手を戻した。

 「ありがとう、書類は返したほうがいいよな」
 「うん。」

 ポーレットは向きを変えて踊り場へ出ようとしたが立ち止まって、数秒後、彼は振り返ってキッチンへ戻った。ダニエルはまだ顕微鏡から目を離していなかった。

 「彼女はあれからまたメールして来た?あの…一件が済んだ後にさ」
 「一度、数ヶ月前に」
 「何て言ってた?」
 「『さようなら、ブラッドフォードさん』」

 ポーレットは考えこんで、じっと彼を眺め、そっと溜息をついた。

 「はあ」

 ポーレットは暫くキッチンのドアの前を歩き回っていた、何かもっと言えることはないか考えながら。そしてとうとう向きを変え、階段を降りていった。





 ポーレットが視界からいなくなると、ダニエルは顔を上げて部屋を眺めた、そしてテーブルの上に置いてあった自分の電話を取り、保存したメッセージを呼び出した。リビングへ歩きながら、彼は保存してあった「The Woman(あの女)」からのメッセージをスクロールした。彼らは長い間やり取りしていた様だ。




 ────『お腹空いてないけど、お食事しましょ』

 ────『ホテルで退屈してるの。来て。お食事しましょ』

 ────『彼女のブログっておもしろい。彼女ってあなたが思ってるよりもあなたのことが好きなんだと思う。お食事しましょ』

 ────『タワーブリッジが見える、それに部屋から月も。私がいるところに来て一緒にいて』

 ────『道で今日あなたを見かけた。あなたは私を見ていなかった』

 ────『実はあの帽子が自分に似合ってるって知ってるんじゃない?』

 ────『ああ、お願い。お食事しましょ』

 ────『 私ね、あなたのおかしな帽子好きよ』

 ────『エジプトにいて馬鹿な奴と話してるの。飛行機に乗って、お食事しましょ』

 ────『 “Crimewatch”のあなたってセクシーね。お食事しましょ』

 ────『もう食事をしてたとしても。お食事しましょ』

 ────『BBCのチャンネル1を見て。あなたでもきっと笑うわ』

 ────『クリスマスプレゼントをあなたにあげようかと考えているの』

 ────『マントルピース』

 ────『私は死んでない。お食事しましょ』

 そして、ダニエルが彼女に送った返信が一つだけあった。

 『Happy New Year』

 リストの最後は、彼女から彼への最後のメッセージが残されていた。

 『さようなら、ブラッドフォードさん』

 リビングの窓にたどり着くと、彼は長い間最後のメッセージを眺め、そして顔を上げると雨が降っている窓の外を見つめた。





 二ヶ月前のカラチ。そこは夜で、外国語で叫んでいる男の声が背後に聞こえる。揺れるカメラ映像はやがて鮮明になり、軍用車の前の地面で跪いているアイリーン・アドラーを映しだした。中東の女性のような装い────黒い布を全身に纏っていて、髪は黒いハンカチで覆われている。彼女は片手で電話に入力していた。右手に立っている男は片方の手にライフルを握り、もう片方の手で繰り返し彼女の電話へ手を出した。アイリーンは彼を拒否して、メッセージを終えるまでそれを渡すのを拒んだ。

 『さようなら、ブラッドフォードさん』

 彼女は送信ボタンを押し、男へ電話を渡した。彼女の左にいる二人目の男が歩み寄り、彼女の頭へ鉈を振り上げた。ゆっくり、彼女の首の後ろへ下ろし、狙いが命中するか確認した。アイリーンは上を見つめた、泣かないよう涙を堪えながら。





 数秒の後、何処からか『Ah』という色っぽい女性の吐息が宙に響いた。アイリーンは目を開き、希望を見出して死刑執行人の方を振り返った。彼の顔は目を除いて布で覆われていたが、とても見覚えのある、赤く燃えるようなの目が彼女と視線を合わせ、密かに言葉を発した。

 「“走れ”と言ったら、走れ」

 彼女は再び前を向き、ダニエルは鉈を後ろへ引いた────彼が死の打撃を与えようとしているかのように。だが彼は向きを変え、アイリーンではなく近くの民兵を攻撃し始めた。アイリーンは前を見つめた────生きようとしていることが信じられずに目を見開き、涙を流しながらゆっくりと微笑んだ。





 ダニエルは少しの間微笑んで、一人でくすくす笑いながらアイリーンの電話をポケットから取り出すと空中へ投げてまた受け取り、しばらく眺めた。

 「“あの女”か、……」

 近くのキャビネットの一番上の引き出しを開けて電話をその中に置く。完全に離れる前に手を止め、指をまた電話の上に置いてじっと眺めた。

 「ふふ、“あの女”」

 彼は顔を上げて暫く雨が降る街を見つめていた。そしてまた部屋へ戻っていった。




 Fin



[451] 『ボヘミアの醜聞』#9

投稿者: もふぇりんぎ 投稿日:2018年12月19日(水)19時35分51秒 p565075-ipngn200310otsu.shiga.ocn.ne.jp  通報   返信・引用

────次回、最終話。

『ボヘミアの醜聞』https://6910.teacup.com/snt/bbs/441
『ボヘミアの醜聞』#2  https://6910.teacup.com/snt/bbs/442
『ボヘミアの醜聞』#3 https://6910.teacup.com/snt/bbs/443
『ボヘミアの醜聞』#4 https://6910.teacup.com/snt/bbs/444
『ボヘミアの醜聞』#5 https://6910.teacup.com/snt/bbs/445
『ボヘミアの醜聞』#6 https://6910.teacup.com/snt/bbs/446
『ボヘミアの醜聞』#7 https://6910.teacup.com/snt/bbs/447
『ボヘミアの醜聞』#8 https://6910.teacup.com/snt/bbs/449




────


 車の中、ダニエルはまた搭乗券を取り出して侍従に何を推理しているかを話した。

 「旅客機の爆撃がある予定だった。イギリス政府とアメリカ政府はそれを知っているが情報源を明かすことよりもそれが行われることを選んだ。飛行機は爆発するだろう。コベントリーの再来だ。車輪は回る。何も目新しいことはない」

 侍従も運転手も彼に応じなかった。





 暫くして車はヒースロー空港に着き、格納庫を過ぎて滑走路に駐められた747ジャンボ機へ向かった。飛行機の近くで車は止まり、ダニエルは入口へ伸びる階段へ向かった。そこには見覚えのある姿が階段の足元に立っている。そこにあったのは、アイリーンの部屋でダニエル達を襲い、大家の身まで襲った男の姿だった。それに気づいた途端、ダニエルはわざとアメリカ人のアクセントで話し始めた。

 「おや、良くなったみたいだね。気分はどうだい?」
 「あんたの脳みそに弾を撃ちこんでやりたい気分…ですね」

 ダニエルは静かに含み笑いをし、階段を登り始めた。

 「勲章で俺は止められた、もし…」

 ダニエルは立ち止まり、偽善的に言い放つ。

 「おや、失礼」

 ダニエルは半ば彼の方を向いていたが、気にしないことにして階段を登り続けた。





 ダニエルは惘と薄暗い機内のカーテンを引き、客席の通路へ入った。照明は微かでほとんど見えない。ほとんどの席に人が座っていたが動いたり話したり、生きている証を見せる者はいなかった。眉をひそめて彼は前へ進み、近くの旅行者に近寄ってみた。頭上の照明がお互い顔を向けて座っている二人の男をより明らかに見せたが、ダニエルは今、真実に気付いた。────彼らは死んでいる。此処にいる、全員。けれども彼らは腐敗した様子を見せなかった、その肌は非常に灰色でしばらく前に死んでいたのは明らかなのに。彼は向きを変え通路の別の側の乗客を眺めた。よく見えるように別の頭上の照明を点けると、男性と女性がそこに座っていてその二人も死んでいた。ダニエルは起き上がるとこの飛行機に乗っている全員が同じ状態であることに既に気付いていた。そこへ、兄のメイナードが区画の別の端から話を始めた。

 「…コベントリーの謎だ」

 ダニエルが驚いて振り向くとメイナードがカーテンを閉めてキャビンへ入ってきた。厳かに話す声は前にいる遺体たちに敬意を示しているかのようだった。

 「私が採った解決策についてどう考える?」

 ダニエルはキャビンを見回した、まだじっと見入っている。

 「…死者の飛行」
 「飛行機は中空で爆撃された。テロリストのミッションは成功した。数百人の犠牲者、でも誰も死なない」
 「見事だな、弟。そう思わないか?」

 ダニエルは面白くなさそうに微笑んだ。

 「お前は長いこと初期の段階で躓いていた────もしくは警告のパターンに飽き飽きしていたのかな?」

 ダニエルの心の中に二人の少女が彼の部屋で座っている場面が蘇った。

 ────おじいちゃんが死んだときに会わせてくれなかったの。

彼は少し顔を上げ、気味の悪い男が違う場面で同じ椅子に座り、骨壷を抱えているところを思い出した。

────あの人は私の本当の叔母ではないんです。私は人間の遺灰がどんなものか知ってるんです。

 「我々はドイツと共に同じような計画を暫く前に行った、ひとりは飛行機に乗らなかったようだがな」

 ダニエルは車のトランクに置かれた遺体とベルリン空港のスタンプが押されたパスポートを思い出した。

 「だがお前のための死者────故人だ、あらゆる意味において。」
 「どうやって飛行機は飛ぶ予定だったんだ?…………ああ、当然か、無人の飛行機。新しくない」
 「飛ばない。飛ぶことはない。この完全な計画は中止された。我々が爆撃について把握していることをテロリストの支部に密告されてしまったのだ。今、奴らはバカにできない。我々は全てを失った。メールの断片ひとつが、計画に費やした年月を台無しにしてしまったのだ」
 「防衛省の役人」
 「得たものは、ある哀れな騙されやすい、目立ちたくてたまらない男、そして彼を特別な気分にさせるのに充分な賢い女、だ」
 「…ふん。兄貴はもっと慎重に、守備につく人間を選んだ方がいい」
 「防衛省の役人の話をしているのではない、ダニエル!お前のことを言っているんだ!!」

 ダニエルは顔を顰め、偽りなく混乱した。メイナードは先程よりもさらに静かに話を続けた。

 「……苦しんでいる若い女性」

 メイナードは嘲笑を浮かべてダニエルへ歩み寄った。

 「結局、お前はそんなにわかりやすい奴なのか?これは教科書だったのだ、愛の約束、喪失の痛み、救済の喜び、そして彼にパズルを与える…」

 そして、いつも持ち歩いている傘を振り、囁いた。

 「…そして踊らされているのを眺める」
 「馬鹿にするな」
 「馬鹿にする?どれくらい素早くあのメールを解読した?一分かかったか、それとも本当に感動させようと熱中したか?」

 するとダニエルの背後からアイリーンが姿を表した。

 「五秒もかからなかったと思うわ」

 ダニエルは振り返って彼女がキャビンの端に立っているのを見た────美しく着飾っている。化粧をきちんとして、髪は完璧に結われていた。メイナードはダニエルへ悲しそうに眉を顰めた。

 「お前を彼女の計画に引き入れてしまった、すまない、私は知らなかったんだ」

 ダニエルは歩み寄るアイリーンにまだ目を向けていた。

 「ブラッドフォードさん、話し合いが必要ね」
 「そうだろうな。まだ明らかになってないことがかなりある」
 「あなたじゃないの、弟さん。あなたはもう済んだ」

 彼女はメイナードの方へ通路を進み続けた。ダニエルは振り返って彼女が進むのを見ていた。彼女は電話を取り出して掲げ、兄に見せる。

 「もっとあるのよ…悩みの種が。あなたの世界を崩壊させる秘密や写真、スキャンダルがこの電話の中にあるの。どれくらい混乱を招くことになるか、どうすればそれを阻止できるかわからないでしょうね────上司へ報告するなら話は別だけど、重大な機密の漏洩が自分の弟によるものだって」

 メイナードは彼女の視線を受け止めていることができず、黙って項垂れた。





 暫くして、メイナードはアイリーンとダニエルに彼の邸宅・仕事場を提供していた。兄はダイニングテーブルに向かって座り、アイリーンはその向かいに座っている。ダニエルは少し離れた暖炉のそばで肘掛け椅子に腰掛け、二人に背を向けていた。右手を繰り返し握ったり開いたりしながら、他の二人の会話を聞いている。メイナードはテーブルの上に置いてある電話を指し、攻撃性も脅しもその声に出さず、話し出した。

 「我々は情報を取り出せる」
 「その考えをあなたのためにテストしてあげたわよ。六ヶ月間ダニエル・ブラッドフォードに試させたの」

 ダニエルは苦痛を感じて暫く目を閉じた。

 「ダニエル、ねえあなた、私の電話をレントゲン検査して何を見つけたか教えてあげて」
 「ケースの中に四つの部品が配線されている、酸化物か微量の爆薬と思われる」

 メイナードは絶望して手に顔を埋めた。

 「ケースを開けようとすると記録装置を燃やすだろう」
 「爆薬。まさに私」
 「データのいくらかは常に修復できるものだ」
 「そのリスクを取るの?」
 「君はこれを開くのにパスコードを持っている。誠に遺憾だがそれを聞き出せる人材がいる」
 「……ダニエル?」
 「二つのパスコードがあるだろう、ひとつは電話を開くもの、ひとつは記憶装置を燃やすもの。脅迫の下では彼女がどちらを教えたか知りようがない、そして二回目の試みには期待できない」
 「彼って素敵よね?紐につないで置くべきね────というか、そうするかも」

 アイリーンは強い眼差しで彼を見つめたが、ダニエルは彼女に背を向けたままで、彼女の表情を見ることができなかった。

 「それならこれを破壊する。誰も情報を持たない」
 「いいわね。いい考えじゃない…あなたが燃やそうとしているこの情報にイギリス国民の命がかかっていなければね」
 「かかっている?」
 「公平にプレイしようと言っているのよ。もうお遊びはやめるわ」

 彼女は前にあるテーブルに置かれたハンドバッグを探り、封筒を取り出すとメイナードへ向けてテーブルの上を滑らせた。

 「要求のリスト。それから承諾してくれるのであれば私の保護についての案も」

 メイナードは用紙を封筒から取り、広げ始めた。

 「国家の財産に大きな穴を開けることはないでしょう────私を抱えることになるけど」

 メイナードはアイリーンがリストにした要求を読みながら驚いて眉を上げた。

 「一晩それについて考えたいでしょうね」
 「ありがとう、そうだ」
 「お気の毒に」

 メイナードは彼女を見た。肘掛け椅子でダニエルは何も言わず鼻で笑った。

 「メイナードさん、皆の前に出ていって話すのよ」

 溜息をついて、メイナードは椅子に沈み込んだ。

 「君はとても…徹底しているな。我々の人材も君の半分くらいは優れていればいいんだが」
 「私とだけの手柄じゃないわ。ちょっと助けがあったの」

 彼女はダニエルの方を見た。

 「ああ、アーチボルド・カディネットさんが宜しくですって」

 ダニエルは顔を上げた。

 「ああ、彼も関わっていた。私の配慮を求めているらしい…」

 メイナードの声は不吉さを増した。

 「…応じるつもりだ」

 他の二人は気付いていないが、ダニエルの視線は鋭くなり始めた。アイリーンは立ち上がってテーブルに沿って進み、メイナードの傍へ行くと端に腰掛けた。

 「私はこの情報のすべてを得た、それが何の役に立つかも知らずに。犯罪コンサルタントに感謝ね。どうやってブラッドフォード家の男たちとプレイすればいいかたくさん教えてくれた。あの人があなたたちを何て呼んでるか知ってる?」

 アイリーンは小声でそっと囁いた。


 「氷の男…」

 アイリーンはメイナードと顔を見合わせた後、ダニエルへ視線を移す。

 「それから…童貞君」

 ダニエルは目を動かしたが、それはアイリーンが言ったことに対してのリアクションなのか、何か閃いたからなのかは明らかでなかった。

 「何も訊かなかった。あの人はただトラブルの原因が好きなのね。そしてそれこそ私の求める男」

 ダニエルは目を閉じ、そっと溜息をついた。

 「そして君は、国家をひざまずかせる女王様か」

 ダニエルの目は再び開いた。明らかに、何かの作業を終えたように。メイナードは立ち上がりアイリーンに軽くお辞儀をした。

 「見事なプレイだった」

 メイナードは向きを変え、彼女の要求を検討し始めた。アイリーンは満足して微笑んで立ち上がり、勝利を確信していた。

 「違う」

 彼らはダニエルの方を向いた。

 「え?」

 ダニエルは彼らの方へ顔を向けた。

 「違うと言った。非常に、とても近いが、でも違う」

 ダニエルは立ち上がり、アイリーンへ歩み寄り始めた。

 「君は夢中になった。ゲームは念入り過ぎた────楽しみ過ぎたんだ」
 「過剰なことなんてない」

 歩み寄り、彼女を見下ろしながらダニエルは嘲笑した。

 「ああ、追われるスリルを楽しむのは良いことだ、ゲームの気晴らしを求めることは────完全に同意する────だが感情?感情は敗者に見られる科学的欠陥だ」

 彼は言葉の終わりを少し強調して僅かに歯を見せた。

 「感情?な、何のことを言ってるの?」
 「君のことだ」

 アイリーンはまだ余裕を見せて微笑んだ。

 「ああ、なんてこと。可哀想な男をご覧なさい。あなたに興味を持っていたと本当に思ってるの?なぜ?だってあなたは偉大なダニエル・ブラッドフォードでしょう?おかしな帽子を被った、賢い探偵の……」

 ダニエルは更に彼女に近寄った、二人の身体はほとんど触れ合っている。

 「……違う。」

 彼は手を伸ばしゆっくりと右手で彼女の左手首を包んだ、そして前へ屈み彼女の右耳へ口を近付けて囁いた。

 「君の脈を測ったから」

 ────アイリーンが221Bでダニエルの前に跪き、手を彼の手の上に置いている時、彼は彼女の手を自然に返し、指先を撫でる振りをしながら脈を探し、彼女の手首の下に合わせていた。

 そして、ダニエルは困惑して眉を顰めるアイリーンの手首をしっかりと握った。ダニエルは彼女の耳元へ小声で話を続けた。

 「脈は上がっていた、瞳孔は開いていた」

 ────彼女はあの時、彼の前に跪き、彼の目を熱心に見つめていた。

 今、彼は彼女の手を離し、彼女に寄りかかるようにしてテーブルから電話を取り上げて姿勢を直した。

 「ポーレット・ハクルートは、僕にとって愛とは不可解なものだと考えているようだが、化学は非常に単純だ、そしてとても破壊的だ」

 ダニエルは向きを変え、アイリーンから少し離れた。彼女は彼がまた自分の方を向くまで彼を追った。

 「初めて会ったとき、変装は常に自画像だと君は言った。いかにも君の真実だ、金庫の暗証番号────身体のサイズ、だがこれは……もっと深い関係にあると思える」

 ダニエルはセキュリティーロックを外し「I AM _ _ _ _?Locked」の画面を出した。

 「これは君の心…」

 彼女の目から視線を外さず、彼は四文字の最初を親指で入力した。

 「…それに支配されてはならなかった」

 アイリーンは彼を見つめながら落ち着こうとしたが、パニックが目に現れ始めていた。

 「適当な数字を選んでおいて、今日ここから出ていくことも出来た、身を捧げたすべてのものと…」

 ダニエルは二番目の文字を入力した、彼の目はまだ彼女に合わせられたままだった。

 「…でも抵抗できなかったんだろ?」

 アイリーンの息遣いは荒くなった。ダニエルは少し誇らしげに微笑んだ。

 「僕は常に、愛とは危険なものだと考えている…」

 彼は三番目の文字を打った、まだ彼女を見つめている。

 「最後の証拠に感謝する」

 四番目の文字を入力する前にアイリーンは彼の手を掴み、激しい眼差しで見つめながら囁くような声で嘆願した。

 「私が言ったことはみんな、あれは本当のことじゃないの。ゲームをしていただけなの」
 「分かっている」

 彼は優しく手を離し、最後の文字を入力した。

 「そしてこれが────敗北だ」

 そう言ってダニエルは画面が見えるようにゆっくりと電話を彼女に向けた。それを見たアイリーンの瞳から涙が零れ落ちる。その文字列は:

I AM

SHER

LOCKED


 “私はシャーロックの虜”

 アイリーンは数秒間絶望したまま画面を見つめた。そしてダニエルはアンロックされてメニュー表示をしている電話をメイナードに渡した。

 「開けたよ、兄さん。その中身が今夜迷惑をかけた埋め合わせになるといいんだが」
 「彼らはやってくれるだろう」

 ダニエルは向きを変え、ドアの方へと歩き出した。

 「思い遣る気があれば、彼女を保護してやるか、逃がしてやってくれ。自己防衛なしに長生きできるか疑わしい」

 アイリーンはダニエルを見つめた、目は大きく開かれていた。

 「私が懇願するとでも?」
 「ああ。」

 ダニエルはドアの近くで立ち止まり、横顔を向けた。アイリーンは暫く怒りを込めて彼を見つめていたが、やがて自分には選択肢がないことに気付いた。

 「ねえ、お願いよ」

 彼は動かなかった。

 「あなたは正しいわ」

 ダニエルは顔を向けてアイリーンを見た。彼女は嘆願するように彼を見つめた。

 「……半年だってもたない」
 「食事を共に出来なくて残念だ」

 冷たく言い放つとダニエルは向きを変え、ドアに進み部屋を出て行った。彼が去っていくのを見つめていたアイリーンはドアが閉じられると恐怖に包まれた。



 ……To be continued.


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